すぎゆく

日記が新しい場所に移った。ここのことをブログと呼んでいいのかわからないので日記と呼ぶことにした。以前使っていたブログは、逆算すると8年くらい使っていたらしい。この8年の間に「ブログ」というワードがどういう遍歴を辿って今に至るのか全然把握していないので、安易にブログという呼称を使えずにいる。言葉はだんだん更新されていく。アベックがカップルになったとか、ジーパンがジーンズになったとか、いつの間にか知らない間に古いものは新しいものに挿げ替えられていく。アベックに関しては更新された後の世界でしか生きたことないので所謂「りろんはしってる」だけだけど。なんかまあとにかくいろいろと変わっていく。

最近ライブツアーをやっている。数年前じゃ考えられなかったことだと思う。あの頃の自分にとって音楽は画面の中で完結するものであり、とても個人的で孤独なものだった。田舎を出るまではろくにライブをやったこともなければ見たこともなかったので、都会に出て初めて行ったライブでは、ことあるごとになるほどなるほどと膝を打ちながら、同時にどこか他人事のような気分でぼんやりしていたのを憶えている。自分が作ってきた音楽も、こういう場所で演奏されて、このえもいえぬ一体感の為に定義しなおされるのだろうかと、あの時やっぱり他人事のようにぼけっと考えていたのを憶えている。

ツアー中にツアーのことを色々書くのはネタバレっぽいなと思うのでやめにする。ただ何となく、今この瞬間に記録しておかなければもう二度と取り戻せないものがあるんじゃないかと不安になる瞬間がある。こうやって言葉にして反芻しておかないと、知らない間に記憶も感覚も更新されてしまうのではないか。あの店もうなくなったんだね、機械がはったつして便利になったね、ここら辺も住みやすくなったね、そうやって野暮ったい時代はいっさいに過ぎていき、洗練されたものがぼんやりと生き残っていく。

8年前の自分と何が変わったんだろうか。ライブは圧倒的に楽しくなった。他人事であったものが身にしみて理解できるようになったし、その渦中に身を投じることができた。むつかしい言葉もちょっとは理解できるようになったし、洗濯物もちゃんと畳めるようになった。独りでいる時間は減り、前向きにものを考えることが増えた。明日からはどんなふうに変わっていくだろうか。不安と期待がないまぜになったまま、ただぼんやりと楽しい1日が永遠に続けばいいと今は思う。